さくらん : 蜷川実花

もしかしたら自分のお部屋で自分の鼻先にあるモニターで観たなら、女友だちの愚痴混じりのおしゃべりを聴いてるみたいで楽しいかもしれない。それはちょっと空気の読めないお話の下手な友だちなわけだけれど、目に余る男子の行動については「それってひどいねっ」って鼻息荒く憤慨したりはもちろんできる。できるし、そんな彼女のことをかわいらしくも思えちゃう。みたいな。
甘ったるくて毒々しくてキャッチーな蜷川実花カラーがパノラマにひろがるものだと思ってたのです。けれどそうでもなかったのです。そうでもないけどそうでもあるような微妙な質感。わりとスタンダードな画に落ち着けたかったのかしらと思いきやパンフレットによるとそんなこともないみたい。であるならばもっと黒がそこに滲んでくような有機的な色たちを望むよ! 画角も甘いしいったいどうしたこと! 椎名林檎楽曲も編集後に制作を開始したというわりには映画音楽としては昇華されていなくて残念なのです。テーマとオープニングとエンディングの3曲以外はうたものじゃなくてよかったと思うのです。
着物やお花や女の子がほんとうにかわゆいのでこまごまとした女子アイテムをチェックしていればけっして飽きはしないけれども… あとはもう、たとえ演出や編集もろもろ映画的に未熟だったとしても、どこかにこの女子道を誇るシーンさえあれば。願わくばフラガールのソロダンス練習シーンのように、ふたつの花魁道中シーンに作品の肝となって欲しかったのです。その闊歩が嘘くさいほど豪奢で絢爛、完全無敵状態でありさえすれば説得力も生まれたでしょう?
しかししかして、ふいにきた(原作読んでたけど忘れていた) 男の子の恐ろしさにはぐっさりやられて大泣きしました。古今東西すべての女の子が見たことのあるであろう鬼がでました。これだからこわい。男の子は本当にこわい。こんなにショックなのにでもきっと「ちかごろのわかものは〜」という嘆きと同様、ずっとむかしから「よくある話」なんだろう。そう思ったら果てしないところへ意識が飛んでしまってあとはもう飲み込むしかなくなったので飲み込みました。
嫌いにはなれない映画でありんす。
木村佳乃さんの半月型のお目々がたいへん美しゅうありんした。
 
(追記)
そういえば。入浴場のシーンはリアルだった。そこだけリアルな感触なのが良いのかどうかは別として。あの生々しさを小さな頃からうまく受け入れられずにいるので、わたしは未だに公衆浴場が苦手だったりする。のだなー。