イノセンス : 押井守

なんでこんなにわかりやすすぎるのかがわからないのでなにかわかってない部分があるんじゃないかと思ってもう一度観にいったのだけれどもでもやっぱりわたしにはみつけられそうになくああそうかほんとうにこうしたくてしたのですね、とようやくだんだんおなかにおちてきました。たぶんわたしは期待し過ぎたのです。彼女に「(押井さんファンにとっては文句のない作品だと思うけれど)今回は押井さん以上のものを期待してたのにな」と云ったら「押井さんに押井さん以上のものを期待するとは」と返されて、たしかに、と反省。だけど、あるはずのないものがずるっとはみ出しちゃった、正視したくないのに目を離せない神々しいまでにドロドロとしたものが! みたいなことってあるでしょう? そんなほとばしる熱いパトスを浴びる準備をして、ほんとうにほんとうにたのしみにしていたのですよ勝手に。
なんつって、ふつうに大ヒットとかしてみて欲しかった(するかもしれないけど! 海外はもちろんとして)、単にそれが口惜しいだけなのかもしれません。もしくは押井さんの映画のすきなところはオープニングやエンディングの入り方が素晴らしく格好良いところでいつもそれだけでわたしのハートの70%は満たしてくれるというのにそれがちっともだったのでしょんぼりしてるだけとか。バトーはもう少し朴訥な男と思っていたわとか「あいつはいっちまったのさ」の“さ”のアクセントは↑でなく↓のほうがとか。もののけ姫のあとに千と千尋があったように、つぎはなんかめちゃめちゃなんだけど勃起し続けてるような怪物が生まれるかもとか。
とはいえ、もちろんダメなわけなどなく、何度観てもひきこまれてく美しい映画だと思います。たぶん回を重ねるごとに心地よく鑑賞できるのではないかしら言葉も美術として飲み込めるころ。どんな解釈があろうともリアルに傾きすぎたCG(そしてデザインされすぎたマシンも / 蟹男なんてもってのほか)はわたしは好きじゃないのですが、人形の艶めかしさ、ゴシック×アジアの世界観はスタンダードに素晴らしくてどっぷり浸るに値します。
http://www.innocence-movie.jp/